すぐ忘れる・仕事でミスが多い原因はワーキングメモリが低いから?今日からできる対策を伝授

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「メモをしたのに忘れる」
「聞いたそばから内容が抜ける」
「何度も同じミスをしてしまう」

このような経験をしたことはありませんか?

こんなことが続くと、自分は仕事ができないのではないか? 努力が足りないのではないか?などと自分を責めてしまいがちです。

しかし、実際にはこうした問題の多くは“能力の低さ”や“やる気”ではなく、“脳の特性”によって起きている可能性があります。

そのカギとなるのが、ワーキングメモリです。

ワーキングメモリとは、「覚えながら処理をする力」、つまり頭の中で一時的に情報を扱う力のことです。

この容量が少なかったり、使い方に苦手さがあったりすると、どれだけ真面目でも、どれだけ頑張っていても、仕事でミスが増えやすくなります。

この記事でわかること
  • 仕事のミスとワーキングメモリの関係
  • ワーキングメモリが低めの人の特徴
  • 今日からできる具体的な対策
  • 役立つ道具・アプリ
  • 周囲に誤解されない伝え方

すぐ忘れてしまう、仕事でミスが多い、それらがなぜ起きているのかがわかれば、対策は必ず見つかります。

この記事を書いた人
この記事を書いた人
ネロリ

公認心理師
精神科病院で20年勤務。
心理師としては15年程専門業務に従事しています。
色々な方の悩み事をお聴きし、どうしたら気分が楽になるか、問題が解決されるかを一緒に考え、サポートする仕事をしています。
当ブログでは、心を整えるセルフケアや生きやすくするための苦手対策について情報発信しています。

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ワーキングメモリとは?

ワーキングメモリとは、簡単に言うと「考えるために使う、頭の中の一時メモ帳」のような機能です。

私たちは日常的に、

  • 人の話を聞く
  • 指示を理解する
  • 次に何をするか判断する
  • その場で行動する

といったことを、ほとんど無意識に行っています。

このとき、今入ってきた情報を一時的に頭の中に置きながら、同時に処理する力が必要になります。

その中心的な役割を担っているのが、ワーキングメモリです。

たとえば、上司から「この資料を10時までに修正して、A社にメールで送っておいて」
と言われた場面を想像してみてください。

私たちは無意識のうちに、

  • 「修正する資料はどれか」
  • 「締切は10時」
  • 「送付先はA社」
  • 「送信手段はメール」

といった複数の情報を一時的に保持しながら、「まず何からやるか」「今すぐ動くべきか」を判断しています。

この「覚えながら考える」「考えながら動く」ための土台が、ワーキングメモリです。

なぜワーキングメモリが仕事のミスと関係が深いのか?

仕事は、ワーキングメモリに強い負荷がかかりやすい条件がそろっています。

たとえば、

  • 口頭指示を聞きながら理解し、覚える
  • 複数のタスクを同時に抱え、必要に応じて柔軟に切り替える
  • 情報を整理しながら、その場で判断・行動する

これらはすべて、「一時的に保持する」「同時に処理する」ことが求められる作業です。

ワーキングメモリの容量や余裕が少ない状態では、情報が処理しきれず、こぼれ落ちるのは自然なことです。

つまり、仕事のミスが多いからといって、「注意力がない」「真面目さが足りない」「仕事に向いていない」と決めつける必要はありません。

ミスの多さはワーキングメモリにかかる負荷が重すぎることが原因かもしれません。

このあと紹介する対策は、この負荷を”どう減らすか”に焦点を当てています。

補足:短期記憶とワーキングメモリの違い

ワーキングメモリについて説明すると、よく出てくるのが次の疑問です。

それって、短期記憶と何が違うの?

結論から言うと、
短期記憶とワーキングメモリは似ているけれど、役割が違います。

短期記憶とは、入ってきた情報をしばらくの間、そのまま保持する「一時的に覚えておく力」です。

たとえば、

  • 電話番号を一時的に覚える
  • ロッカー番号を忘れないようにする
  • 暗証番号を入力するまで覚えておく

といった場面で使われます。

ここで重要なのは、
「覚えること」が目的で、「処理」はほとんど伴わないという点です。

一方、ワーキングメモリとは「覚えながら使う力」で、

  • 覚えた情報を使って考える
  • 他の情報と照らし合わせる
  • 判断や行動につなげる

といった、処理を伴う記憶です。

たとえば仕事では、

  • 指示を覚えながら作業の順番を考える
  • 会話内容を保持しつつ、返答を考える
  • 数字を頭に置きながら計算・確認をする

といった形で使われています。

短期記憶は、頭の中に置いておくだけなので比較的負荷が軽く、ワーキングメモリは、置きながら動かすため、負荷が大きくなります。

短期記憶の問題だと思うと、「もっと覚えなきゃ」「記憶力を鍛えなきゃ」という方向に行きがちです。

しかし、ワーキングメモリの問題であれば、有効なのは次のような対策です。

  • 覚えなくていい仕組みを作る
  • 同時処理を減らす
  • 情報を外に出す(メモ・チェックリスト)

つまり、「記憶力を上げる」より「負担を減らす」ことが合理的なのです。

ワーキングメモリが低い人によくある特徴

ワーキングメモリが低めの人には、日常生活や仕事の様々な場面で同じような困りごとが現れます。

ここで大切なのは、これらの特徴は性格や努力不足ではなく、 「情報を一時的に保持しながら処理する容量の特性」から起きているという点です。

① 話の内容・指示をすぐ忘れてしまう

ワーキングメモリが低めの人に最も多いのが、「聞いたはずなのに、抜けてしまう」という困りごとです。

たとえば、

  • 説明を聞いた直後なのに、一部思い出せない
  • 「えっと…何でしたっけ?」と聞き返すことが多い
  • 指示が3つ以上になると、どれかが必ず抜ける

これらは「聞いていない」わけではなく、音声情報を一時的に留めておく余裕が少ないために起こります。

特に口頭指示は、

  • 消えていく
  • 巻き戻せない
  • その場で理解と判断も求められる

という点で、ワーキングメモリにとって非常に負荷が高い情報です。

② ケアレスミスが多い

  • 入力ミス
  • 記入漏れ
  • 文章の読み飛ばし
  • 添付忘れ
  • チェック漏れ

こうしたミスが重なると、「注意力がない」「確認が甘い」と言われがちです。

しかし実際には、作業の途中で必要な情報を頭の中に保持し続けることが難しいために起きています。

つまり、「確認しよう」と思っても、その確認項目自体が頭から抜け落ちてしまう、という状態です。

意識や気合で防げるミスではありません。

③ 一度に複数のことを言われると混乱する

「AをやってからB、そのあとCもお願いします」

こうした連続指示は、ワーキングメモリが低めの人にとって非常に消耗するものです。

なぜなら、

  • 情報を保持する
  • 順番を整理する
  • 抜けがないか確認する

という処理を、同時に行う必要があるからです。

これらを適切に行うことができないと、結果として、

  • 何から手をつけるかわからなくなる
  • 途中で別の作業をして元に戻れなくなる
  • 最初の指示を忘れる

といった混乱が起きやすくなります。

④ 計画・段取りを立てるのが苦手

ワーキングメモリは、「今ある情報同士をすり合わせる」役割も担っています。

そのため、

  • 作業の全体像をつかみにくい
  • 手順を頭の中で組み立てられない
  • 計画しても、途中で崩れる

といった特徴が出やすくなります。

「計画性がない」のではなく、計画を頭の中だけで保持するのが難しい状態なのです。

⑤ マルチタスクが極端に苦手

  • 話を聞きながらメモが取れない
  • 作業中に話しかけられると内容が飛ぶ
  • 電話対応しながらPC操作ができない

これは能力不足ではなく、 同時処理をすると保持している情報が抜け落ちてしまうためです。

ワーキングメモリが低めの人は、「切り替えが遅い」「戻るコストが大きい」という特性があるため、 マルチタスク環境では実力を発揮しにくくなります。

⑥ 文章理解や会議がとても疲れる

  • 長文を読むと途中で内容が分からなくなる
  • 会議中、話の流れを追えなくなる
  • メモを取ると話が聞けず、聞くと書けない

文章理解や会議は、情報を保持し、前後関係を整理して意味を統合する、というワーキングメモリを大量に使う作業です。

そのため、理解に時間がかかる、会議後にぐったり疲れる、といった状態になりやすくなります。

⑦ 忘れ物・抜け漏れが多い

持ち物、期限、やるべきこと、連絡事項、これらを「覚えておく」こと自体が、 ワーキングメモリにとっては高負荷です。

その結果、

  • 出かけてから思い出す
  • 締切直前に気づく
  • そもそも思い出せない

といったことが起こります。

⑧ 会話で気まずくなることがある

  • 相手の話を途中で忘れる
  • 文脈が飛んで、的外れな返答になる
  • 会話のテンポについていけない

これは共感性や関心の問題ではなく、 情報の取りこぼしによるものです。

本人は真剣なのに、相手からは 「話を聞いていない人」と誤解されやすい点が、 心理的ストレスを強めます。

⑨ 疲れやすく、集中が続かない

ワーキングメモリが低めの人は、 同じ作業でも脳のエネルギー消費が大きい傾向があります。

そのため、

  • 会議後に極端に疲れる
  • 午後になるとパフォーマンスが落ちる
  • 集中が長く続かない

といった状態が起こりやすくなります。

これは怠けではなく、負荷が高い状態が続いているサインです。

重要なこと

ここまで挙げた特徴に心当たりがあっても、 それは能力が低いからでもやる気がないからでもなく、「ワーキングメモリの容量と環境が合っていない」可能性があることが考えられます。

だからこそ、次章では努力ではなく、 負担を減らす工夫や 仕組みでミスを防ぐ方法を具体的に紹介していきます。

仕事のミスを減らすために、まずやってほしい9つの対策

ここで重要な前提を、最初にお伝えします。

ワーキングメモリは筋トレのように鍛えれば急に強くなるものではありません。

 それよりもはるかに効果が高いのは、「使わずに済むようにする」「消耗しない設計に変える」という考え方です。

以下の対策はすべて、 ワーキングメモリの容量そのものを変えようとするのではなく、
必要な使用量を減らすことを目的にしています。

①「外部記憶」を最大限活用する(すべての基本)

ワーキングメモリが低めの人にとって最大の敵は、 「覚えておかなければ」という意識そのものです。

人は「あとで思い出そう」とした瞬間に、

  • 情報を保持する
  • 他の情報と区別する
  • 忘れないよう注意を向け続ける

という複数の処理を同時に行います。

これがワーキングメモリを一気に圧迫します。

脳ではなく、外部の道具を活用することで、「情報の保持・監視・再生」という役割を肩代わりさせるのです。

メモは単なる記憶の補助ではなく、主記憶装置です。

ワーキングメモリへの効果

外部記憶を使うことで、

  • 頭の中の保持スペースを空けられる
  • 「覚えておく」という作業自体が不要になる
  • 理解・判断・対応に集中できる

という状態が作れます。

つまり、脳を本来の仕事に集中させられる状態になります

実践ポイント

  • 「覚える前提」を完全にやめる
  • 指示・予定・アイデアは即メモ
  • メモは箇条書き+時系列
  • 会議は「記憶しない」→録音+要点メモ

記憶力を鍛えるより、 記憶を信用しない設計の方が圧倒的に安定します。

②「シングルタスク化」で脳を守る

ワーキングメモリが低めの人は、 タスクを切り替えるたびに「直前の情報が消える」「作業の文脈が飛ぶ」という現象が起きやすくなります。

そのため、作業量は同じなのに 疲労とミスだけが増えるという状態になります。

そのため、マルチタスクを避け、シングルタスク化することで負荷を減らすのが効果的です。

ワーキングメモリへの効果

  • 同時保持が不要になる
  • 手順が安定する
  • 抜けもれが激減する

実践ポイント

  • 「今やること」は1つだけ紙に書く
  • PCタブは3つまで
  • 通知は原則オフ
  • 割り込みが入ったら必ずメモしてから対応
    → 対応後は書いた紙を見て「今ここ」と再スタートする

③「チャンク化」で情報量を減らす

ワーキングメモリには、 「たくさんの情報を長く保持する力」はあまりありません。

代わりに重要なのは、 同時に扱える“かたまり(数)”の少なさです。

次の2つを比べてみてください。

  • ①「1・2・3・4・5・6・7」
  • ②「2025年7月4日」

②のほうが文字数は多いですが、 私たちはこれを 「日付」という1つの意味のかたまりとして扱えます。

そのため、 ワーキングメモリには 1個分の負荷しかかかりません。

これが「チャンク化」です。

補足:チャンク化とは?

チャンク化とは、 情報を減らすことではありません。
バラバラの情報を、意味で束ねて 「1個として扱える形」にすることです。
情報の量はそのままで、見かけの“数”だけを減らす技術です。

ワーキングメモリが低めの人ほど、 この「数」を減らす工夫がミスや混乱の減少につながります。

ワーキングメモリへの効果

  •  情報を束ねることで処理負荷が一気に下がる
  • 頭の中の「ごちゃつき」が減り、 注意散漫・混乱が起きにくくなる
  • 次に何をするかが見えやすくなり、 判断・切り替えのコストが下がる
  • 「全部覚えなきゃ」という緊張・不安が減り、パフォーマンスが安定する
     

実践ポイント

  • 指示は「段階」で捉える

口頭指示を受けたときは、 内容をそのまま覚えようとしないでください。
「何段階の話か?」に変換します。

例:「まず資料を確認して/ 次に修正して/ 最後に上司に送る」
→ 「これは3段階の作業だな」

こうして構造を先につかむだけで、 細かい内容が多少抜けても 全体像は保持できます。

  • メモは「見出し+箇条書き」でかたまりを作る

メモを長文で書くと、 それ自体がワーキングメモリの負担になります。

おすすめは、「見出し」+「その下に箇条書き」という形です。

例:

【メール対応】
・宛先確認
・添付確認
・件名修正

こうすると、覚えるのは「メール対応」という1かたまり、中身は後で見返せばいい、という状態を作れます。

  • 会話では「要するに」を挟む

説明を聞いたら、 こう言語化します。

「要するに、①〇〇して ②△△して ③□□すればいい、という理解で合っていますか?」

これは記憶のためではなく、 構造を確認するための行為です。

相手にとっても分かりやすく、 確認ミスの予防にもなります。

④「視覚化」で頭の中を外に出す

ワーキングメモリには、音声系(音韻ループ)と視覚系(視空間スケッチパッド)があります。

口頭説明や頭の中の思考は、 音韻ループに偏ります。そこに負荷が集中すると、聞き漏れ・混乱・疲労が一気に出ます。

視覚化は 処理ルートを増やす行為です。文字や図にすることで、 音声だけに偏った負荷を分散できます。

ワーキングメモリへの効果

  • 聴覚負荷を減らす
  • 手順保持が楽になる

実践方法

  • 付箋で手順を並べる
  • 矢印や図を使う
  • ホワイトボードに書き出す
    (ホワイトボードは「考える場所」ではなく「覚えなくていい場所」)

「見える」だけで、 脳の疲れ方がまったく変わります。

⑤ 作業前の「3分プランニング」

作業中のミスの多くは、「次どうする?」「どっちを先に?」といった、 判断の連続によって起きます。

判断は ワーキングメモリを最も消耗します。

先に段取りを決めておくことで、 作業中の判断回数=ワーキングメモリ使用量が減ります。

ワーキングメモリへの効果

  • 作業中に考えるべきことが減り、ワーキングメモリの使用量を事前に削減できる
  • 手順・優先度を先に外に出すことで、覚えておく負荷がほぼゼロになる
  • 作業中の迷い・切り替えが減る
  • 「次に何をするか」を探さなくて済み、文脈が飛ぶ・抜け落ちるリスクが下がる
  • 集中力の消耗と疲労が抑えられる

実践方法

  • 今日やることを3つだけ書く
  • 優先度をつける
  • 終わったら消す

たった3分で、 その日のミス率は大きく下がります。

⑥「5分着手」で先延ばしを防ぐ

先延ばしは、作業内容・手順・ゴールが頭の中で未整理な状態で起きます。

先延ばしは意志の弱さではなく、 着手前にすでにワーキングメモリが満杯になっていることが原因です。

ワーキングメモリへの効果

  • 着手時の処理量を最小化
  • 脳が「できそう」と判断できる

実践方法

  • 「5分だけやる」と決める
  • 最初の1手だけを書く
  • 環境を先に整える

⑦ ポモドーロ法で疲れを溜めない

長時間集中は、注意力・判断力・自己制御をすべて消耗させます。

ワーキングメモリが低めの人は、この消耗に特に弱いです。

ワーキングメモリへの効果

  • 集中時間を区切ることで、 ワーキングメモリの過剰消耗を防げる
  • 「25分だけ」と枠が決まることで、 同時に抱える情報量が増えにくい
  • 定期的な休憩で脳が回復する

実践方法

  • 25分:1タスク
  • 5分:完全休憩
  • 4セット後に長休憩

実践中のポイント!
休憩中はスマホを見ないこと!
そして、立つ・目を閉じるなど別の感覚を使うようにしましょう。

⑧ ワーキングメモリを補う生活習慣

ワーキングメモリは、知能や才能というより、コンディションの影響を非常に受けやすい機能です。

つまり、生活リズム・体の疲れ・心理的な緊張によって、同じ人でも「よく働く日」と「あまり働かない日」の差が大きく出ます。

ここで紹介する生活習慣は、ワーキングメモリを「鍛える」ものではありません。

ワーキングメモリをよく使える状態に保つための土台だと思ってください。

睡眠

ワーキングメモリを司る「前頭前皮質」という脳の部分は、睡眠不足・不規則な生活
・夜更かしの影響を、最初に・最も強く受けます。

そのため睡眠が崩れると、うっかりミスが増える、指示が頭に入らない、といった変化が出やすくなります。

これは意志の問題ではなく、脳の回路が一時的に働きにくくなっている状態です。

実践のポイント

  • 就寝時間より「起床時間」を揃える
  • 寝る直前、ベッドに入ってからスマホは触らない
  • 平日と休日の差は2時間以内

特に重要なのは、「毎日7~8時間寝る」よりも、
「極端な寝不足を作らない」ことです!

運動

軽い有酸素運動を行うと、脳への血流が増え、神経を回復します。

実践のポイント

  • きつい運動は不要
  • 10〜20分の散歩で十分
  • 出勤前 or 仕事後に軽く歩く
  • エレベーターを階段に変える程度でもOK

ストレス管理

慢性的なストレス状態では、コルチゾール(ストレスホルモン)が増え、脳の働きが抑制されてしまいます。

その結果、以下のような悪循環に入りやすくなります。

  • 考えがまとまらない
  • ミスが増える
  • 同じ失敗を繰り返す
  • 自己否定が強まる

ストレスを“溜め込まないこと”が重要です。

実践のポイント

  • ミスを振り返る時間を短くする
  • 「性格」ではなく「仕組み」に原因を置く
  • 安心できる人・場所を1つ持つ
  • 呼吸を意識してゆっくり吐く

生活習慣についての大事なまとめ

生活習慣を整えれば、ワーキングメモリが高くなるわけではありません。

生活習慣が乱れると、ワーキングメモリがさらに使えなくなるということです。

生活習慣の土台があるからこそ、前章までの対策が安定して効果を発揮するようになります。

⑨ チェックリストでミスを仕組みで防ぐ

ワーキングメモリが低めの人にとって、仕事のミスが増える最大の理由は「覚えながら・考えながら・確認しながら」を同時にやらされていることです。

チェックリストは、このうち 「覚える」役割を完全に外に出す道具です。

重要なのは、 注意力を高めるためのものではないという点です。

注意が落ちていても、疲れていても、生活習慣が崩れていても、同じ質を保てるのがチェックリストの強さです。

① まず「チェックリストを作る前」にやること

いきなり「確認項目」を考えないでください。
先にやるべきなのは、過去のミスを3~5個だけ集めることです。

以下のように自分に問いかけてみましょう。

  • 最近よくやるミスは?
  • 指摘されやすいポイントは?
  • 自分では気づきにくい失敗は?

その答えとして、以下の例のように挙げていきます。

  • 添付漏れ
  • 数字の入力ミス
  • 名前・日付の間違い
  • 保存し忘れ
  • 送信先ミス

「よくやるものだけ」でOK。10個も20個もいりません。

② 良いチェックリストの作り方(超重要)

原則1:1項目=1アクション

❌ 悪い例

  • 内容を確認する
  • 問題がないか見る

⭕ 良い例

  • 添付ファイルがあるか確認
  • 宛先(To/Cc)を声に出して読む
  • 日付が今日の日付か確認

行動が具体的であるほど、ワーキングメモリを使いません。

原則2:「ミスの直前」をチェックポイントにする

チェックは「最初」や「途中」ではなく「最後」に行います。

作業中は情報が多すぎますし、最後が一番ミスが出やすいからです。

原則3:3〜7項目までに絞る

チェック項目が多すぎると、見なくなる、形だけになる、といった状態が生じやすくなります。

1つのチェックリストは 最大7項目までが目安です。

③ 実践用チェックリスト例

  • メール送信前チェック

☐ 添付ファイルがある
☐ 宛先(To/Cc)を声に出して確認
☐ 件名が具体的
☐ 日付・数字に間違いがない

  • 書類作成後チェック

☐ 名前・日付を確認
☐ 数字を一度読み上げ
☐ 保存できている

  • 出勤前チェック

☐ 鍵
☐ 財布
☐ スマホ

④ チェックリストを「機能させる」使い方

コツ1:余裕があれば見るのではなく、必ず「見るタイミング」を決める

提出前や外出前など行動とセットで覚えることで、 ワーキングメモリを使わずに習慣化できます。

コツ2:「声に出す」「指でなぞる」

これだけで 確認精度が大きく上がります。

コツ3:調子が悪い日は“必須化”する

生活習慣が崩れている日は、見ないと進めないルールにして、ミスを防ぎます。

なぜこれでミスが減るのか?

ここまで紹介してきた対策を見て、こう感じた人もいるかもしれません。

「結局、メモを取るとか、一つずつやるとか、当たり前のことじゃない?」

実は、ここに大きな誤解があります。

これらの対策は“一般的な仕事術”ではありません。

すべて共通しているのは、ワーキングメモリをできるだけ使わない構造になっているという点です。

ワーキングメモリが低めの人は、

  • もともとの容量が小さい
  • 消耗が早い
  • 回復に時間がかかる

という特徴があるため、ミスにつながりやすいのです。

ワーキングメモリは

  • 体調
  • 睡眠
  • 精神的負荷

で簡単に性能が落ちます。

つまり、努力ではどうにもならない日が必ずあるのです。

対策が効く理由①:メモで「保持」が不要になる

メモを取ることで起きている変化は、単なる記録ではありません。

脳内では、「覚えておく」という作業がごっそり消えています。

これにより、ワーキングメモリの空き容量が増えるのです。

対策が効く理由②:シングルタスクで「同時処理」が不要になる

タスクを一つに絞ることで、

  • 保持する情報が1つになる
  • 切り替え時の情報消失が起きない

結果として、手順が安定し、抜け漏れが減少します。

対策が効く理由③:チェックリストで「思い出す」が不要になる

チェックリストは、思い出す必要がなくなることにその価値があります。

チェックリストがあれば、見ればわかるので「あれはやったかな?」と疑う必要がなくなるのです。

仕事でミスが多いと、自分をこう責めがちです。

  • 注意力が足りない
  • ちゃんと考えていない
  • もっと頑張らないと

しかし実際は、脳の特性に合っていない仕事のやり方をしているだけというケースが非常に多いです。

必要なのは、能力を引き上げることではなく、負荷をかけない構造に変えることです。

ワーキングメモリが低めの人が抱えやすい心理的ストレス

ワーキングメモリの問題は、単に「仕事でミスが増える」だけで終わりません。

実は多くの場合、二次的な心理ストレスを強く生み出します。

ここが理解されにくく、本人が一番苦しみやすいポイントです。

「またミスするかも」という予期不安

ワーキングメモリが低めの人は、

  • 指示を忘れた
  • 抜け漏れを指摘された
  • 同じミスを繰り返してしまった

という経験を何度も重ねています。

すると、次第に「また同じことが起きるかもしれない」と考えるようになり、作業前から緊張したり、些細な作業でも不安になったりします。

この予期不安自体が、さらにワーキングメモリを消耗させるため、

不安 → パフォーマンス低下 → ミス → 不安

という悪循環に陥りやすくなります。

叱責・指摘への過敏さ

  • 注意される
  • 叱られる
  • ため息をつかれる

といった経験が積み重なると、

  • 指摘されること自体が怖くなる
  • 人の視線に過敏になる
  • 報告や相談を避ける

といった反応が起こりやすくなります。これは防衛反応といえます。

自己肯定感の低下

特に深刻なのが、「自分はダメな人間だ」という自己評価の低下です。

「努力しているのに結果が出ない」
「周りはできているのに自分だけできない」

という感覚が続くと、次第に自信がなくなり、挑戦を避けるという状態に陥ります。

「頑張っても評価されない」感覚

ワーキングメモリが低めの人は、人一倍気を張り、頭をフル回転させているにもかかわらず、ミスの印象が残りやすく、評価が低くなりがちです。

すると、「どれだけ頑張っても意味がない」という無力感が生まれます。

重要なポイント

これらの心理的ストレスは、気持ちの弱さや性格の問題ではありません。

失敗体験が繰り返された結果として誰にでも起こりうる反応です。

だからこそ、自分を責めるのではなく、環境ややり方を変えることが最も現実的で効果的な対処になります。

ワーキングメモリを補う道具・アプリ・ツール

ここで紹介するのは、ワーキングメモリを使わずに済む状態を作ることができるツールです。

ツール選びの大原則
  • 覚えなくていい
  • 考えなくていい
  • 迷わなくていい

「外部記憶系ツール」が最優先

タスク管理アプリ、メモ、カレンダーは、

  • 記憶
  • 判断
  • 優先順位付け

を1ヶ所に集約することができます。

視覚化ツールが効く

付箋やホワイトボードは、一見アナログですが非常に強力です。

理由は、順番や関係性が一目でわかるからです。

チェックリストは「最終防衛ライン」

チェックリストは、ミスを防ぐというより、ミスしても致命傷にならない仕組みです。

チェックリストは自分を守るためのツールです。

周囲に理解してもらうための伝え方

まず、大前提として、全員に理解してもらう必要はありません。

重要なのは、誤解されないこと、不利な評価を受けないことです。

「ワーキングメモリが低くて…」などと説明すると、言い訳に聞こえたり、偏見を招いたりする可能性があります。

一方で、「正確に進めるために」「ミスを防ぐために」という目的ベースの伝え方は相手に不信感を与えにくいです。

伝え方のポイント
  1. 目的を先に言う
  2. 具体的な方法を伝える
  3. 相手の負担が少ないことを示す

聞き返しやメモは、丁寧さ・誠実さのサインとして受け取られることも多いです。

沈黙してミスをするより、確認する方が長期的な信頼は確実に高まります。

それでも困りごとが続く場合

ここまでの対策をしても、生活全体が回らない、心身の消耗が激しい、仕事に支障が出続けるという場合があるかもしれません。

そのときは、一人で抱え込む必要はありません。

相談先としては、

  • 産業医、産業保健師
  • 公認心理師、臨床心理士
  • 心療内科、精神科
  • 専門外来

が挙げられます。

① 産業医、産業保健師(会社員・契約社員向け)

業務負荷の整理、作業構造(マルチタスク・タスクの切り替え頻度)の見直し提案、上司・人事への環境調整などにつながる可能性があります。

② 公認心理師・臨床心理士

ワーキングメモリの負荷が大きい状況を整理し、「やるべき対策/やらなくていい努力」を選別して、あなたの生活・職場条件に合わせて、一緒に対策を検討してくれるでしょう。

③ 心療内科・精神科

強い疲労感や不安、不眠、動悸などといった心身の不調が続いている場合は、一度受診を考えてみるのも一つの選択肢だと思います。

心身の状態を評価し、必要に応じた治療・休養・負荷調整の判断をしてくれます。

④ 発達特性・認知特性の専門相談(必要な人のみ)

子どもの頃から同じ困りごとが続いており、環境を変えても何度も問題が繰り返されてしまうような場合、専門外来で相談してみるのも選択肢に一つかもしれません。

相談をすることは弱さや甘えではありません。自分の努力では埋められない部分を補うための行動なので、困った時は相談してみてください。

まとめ

仕事や生活でミスが続くと、人はつい自分を責めてしまいます。

何度も気をつけて、人一倍考えて、それでもうまくいかないと、心まで疲れてしまいますよね。

でも、この記事で見てきた通り、

  • ワーキングメモリには個人差がある
  • 状態によって大きく変動する
  • 無理に鍛えるより補う方が現実的

ということがわかったと思います。能力だけでは説明できないミスが多くあるのです。

ワーキングメモリという「一時的に情報を抱える力」にたくさんの負荷がかかりすぎるとミスが増えてしまう可能性があります。

ワーキングメモリは、頑張るほど強くなる筋肉ではなく、休ませたり、助けたりしながら使うものです。

あなたに必要なのは、もっと頑張ることでも我慢することでもなく、

  • 覚えなくていいようにメモする
  • 一度にやることを減らす
  • 思い出さなくて済む仕組みを作る

という選択です。こうした工夫は手抜きではなく、自分を守るための知恵です。

重要なのは、ワーキングメモリを「使わずに済むようにする」「消耗しない設計に変える」ことです。

もしこれまで、「もっとちゃんとしなきゃ」「また迷惑をかけた」と自分を責めてきたなら、
今日からは少しだけ見方を変えてみてください。

やり方を変えれば、仕事は今よりずっと楽になります。

まずは今日、ひとつだけでもいいので「覚えなくて済む工夫」を試してみてください。

それだけで、明日のあなたの気持ちは少し軽くなるでしょう。

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